まーぴーと焼き芋
紅葉も終わり、寒さが堪える季節となりました。こんな時、食べたくなるものに焼き芋があります。
落ち葉を集め、焚き火をして中にサツマイモを放り込む。
そんな醍醐味が焼き芋にはあります。
これは私が小学生の頃のお話です。確か5年生くらいだったでしょうか。ちょうどこんな時期に、クラスで育てたサツマイモを焼き芋にしようという提案がありました。
みんなで収穫したサツマイモを焼き芋にして食べよう!
クラス中がそのイベントを楽しみにしていました。
イベント当日、近所の農家さんからもみ殻を頂戴し、収穫が終わった校内の畑で焚き火をしました。
クラスのみんなは自分たちで収穫した大小様々なサツマイモの中から「これだ!」と思うものを選びます。
すると男の子はどうしても大きいサツマイモを選んでしまう訳です。
私もできるだけ大きいイモを選び、アルミホイルにそいつを包んで火の中に放り込みました。
そんな私の横で、友達のまーぴーが一際でかいイモをアルミホイルに包んでいました。
私は「まーぴーのイモでかいな!いいなあ。」と羨ましがると、まーぴーは「いいやろ?一番でかいの選んでん。」と自慢気です。
私はそのまーぴーのイモが羨ましくて仕方ありませんでした。
まーぴーは念入りに場所を選び、ここだという場所でイモを放り込みました。
さあ、あとは焼けるまで待つだけです。
焚き火をするなんて、なかなかない経験でしたから、みんな楽しそうにしていました。
何より焼き芋が楽しみですから。自分たちで育て、収穫したイモです。思い入れが違います。
先生が焚き火の様子をうかがい、もういいだろうとのゴーサインが出ました。
灰の中から、みんな自分の焼き芋を選り分けていきます。
私も自分の焼き芋を取りました。いい匂いがします。
アツアツのアルミホイルを剥がし、食べてみると、そんな美味しくありませんでした。
周りのみんなも口々に、あんまり美味しくないことを嘆いています。
私はふと、まーぴーが気になりました。
まーぴーのイモ、一番でかいですから。
私はまーぴーのそばに行きました。まーぴーは笑っていました。まーぴーの焼き芋、生だったんです。
「山ちゃん、おれの生やったわ。」まーぴーはそう言うと、生の焼き芋をガブリと頬張りました。
私も自分のそんな美味しくない焼き芋を頬張りました。
まーぴーは最後に「うまいわ!!!!」と吐き捨てました。
私が覚えてるのはここまでです。その後は記憶が曖昧で。焼き芋、多分捨てちゃったかな。
まーぴーのイモ、どうなったかな?まーぴーなら食べたやろ。
おしまい